◆物売りの少女
2泊3日で参加したカンボジアツアー。
全行程、専属のガイドさんと運転手つき。
決められたコースを車で回り、降りるのは観光スポットだけ。
現地人の生活など、車窓からちらっと眺めてみただけの高みの見物状態だった。
(トンレサップ湖の水上生活見学には行ったが。)
そんな自分の立場に居心地の悪さを感じるような場面がいくつかあった。
カンボジアの生活水準は決して高くない。
シェムリアップは、観光以外の産業に乏しいらしく、国内でも貧しい地域だそうだ。
観光スポットで車から降りる。
すると、物売りの子供たちが群がってくる。片言の日本語で。
多分みんな学校には行っていない。
私は現金を持ち合わせていないので、(通貨はほとんど米ドルで、おっとが財布をにぎっていた。)心苦しく思いながら無視して通り過ぎる。
どこの観光地でもこれが繰り返される。
そのうち、T-シャツくらい買ってもいいかな、という気分になったとき、
ある観光地で、14歳ぐらいのT-シャツ売りの少女に、私は「あとでね。」と答えた。
すると少女は、「あとでね、約束よ。アナタの名前教えて」と言うのだ。
約束とか、名前とか、ちょっと重たいものを感じながら、私は名前を教えた。
買ってあげれば問題ないわけで、おっとに「2ドルちょーだい」と言ったのだが、おっとは
「そんなもん買ってたら、きりがない」と言って、くれようとしない。
その観光地を一通り見て戻ってくると、その少女はにこにこ笑いながら待ち構えていた。
「旦那さんがお金をくれないの、だから買えない」と私が言うと、その子はみるみる形相を変貌させて、「アナタ約束した、アナタうそつきね」となじり始めた。
全部日本語で。
「うそつき」なんて日本語まで覚えているって、どういうことだろう。。。
お土産品売るのに、そんな言葉要らないし。
あやまりながらその場を後にしたのだが、かなり離れてからもその少女は、私の背に向かって「○○(私の名前)ーー!!」と叫び続けていた。
もやもやとどす黒いものが胸に残った。
軽く約束なんてして、残酷なことをしてしまった、ような…。
貧しい中懸命に暮らして身につけた商売のテクニックだったのかもしれないけど。
ニコニコしている彼女は、見ているこちらも笑顔になってしまうようないい笑顔だった。
それを思うにつけ──。
(つづく。)